木 偶 ・ 鳥 形 木 製 品
 木偶(もくぐう)とは、木でつくられた素朴な人形です。目や口、肩や腰のくびれなどが表現されていて、祖先の霊魂である祖霊神(それいしん)を象(かたど)ったもので、祖霊信仰の祭祀(さいし)に用いられたと考えられています。
 方形周溝墓(ほうけいしゅうこうぼ)から出土する木偶は差し立てており、葬(ほうむ)られた人の霊を弔(とむら)う祭祀に使われたと考えられます。湯ノ部遺跡(ゆのべいせき)(野洲市(やすし))出土の木偶には、男女の区別があり、大中(だいなか)の湖南(こなん)遺跡(近江八幡市(おうみはちまんし))では、男女一対で用いられていたことがわかっています。このことからは、子孫繁栄(しそんはんえい)や稲作の豊穣(ほうじょう)を願うための祭祀が執(と)り行われたと想像されます。 パネル631

 鳥形木製品は鳥を象った形代の一種です。古い時期の鳥形木製品は立体的につくられていましたが、時代とともに薄い板状の表現に移り変わっていきます。空を飛ぶことができる鳥は、遠方の祖霊(それい)(祖先の霊)や穀物の精霊(せいれい)である穀霊(こくれい)を迎え入れることができる力があると信じられていました。
 集落の入口やはずれなどに竿や棒の先につけて高く掲(かか)げて、祖霊や穀霊を招き入れたり、送り出したりする悪霊除(あくりょうよ)けの祭祀や豊作を願う農耕祭祀に用いられたと考えられています。 パネル632
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